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改憲派だからこそ反対する「自民と維新の改憲論議」【篁五郎】

■財政健全化で国民はますます貧しくなる

 

 自民党の憲法草案にはこんな条文が書いてある。

 

「第八十三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて行使しなければならない。

2 財政の健全性は、法律の定めるところにより、確保されなければならない」

 

 財政健全化の明記である。一見すると良さそうな条文に見えるがとんでもない。この条文があることで国家は国民のためにお金を使うことはできなくなる。これから少子高齢化社会を迎えて税収が少なくなるのは明らかになっている。その穴埋めのために消費税増税をしたのはご存知の通り。しかしながら消費税は一般財源扱いされていて減税された法人税の穴埋めに使われていた。それは本筋ではないので横に置いておくが、財政健全化の条文があるだけで増税をしなくてはいけなくなる。

 そもそも日本に借金問題などない。国債を借金と言っているけど、どこから借りて、どこに返さないといけないのかわかっている人はこの財政健全化の条文に反対をしている。

 それはなぜか?

 自国通貨建ての国債は借金ではないからである。日本の国債は100%自国通貨建てである。日本円で発行しているのだから日本銀行に返さないといけないが、日本銀行は財務省が株式の50%以上を持っている。財務省が日本円で発行した国債は子会社である日本銀行に返すのだが、日本銀行は日本円を発行して終わり。

 どうやって財政破綻をするのかわからない。今も予算を組むときにやっているが、国債は借り換えもできるし、長期国債というのもある。そうやって予算を確保してインフラ整備や社会保険料の積み増しなどの国民へ投資をすることで国の供給能力をアップさせている。

 財政健全化が条文に入ると国債発行額に制限ができてしまい必要な予算が足りなくなり、国民への投資もできなくなってしまう。だから供給能力が下がってしまい国民は貧しくなってしまう。

 投資の不足は平成の世に入ってから「無駄の削減」という名前で20年以上続いている。今、日本は投資不足のため確実に貧しくなっている。平均所得が100万円近く減り、貯金ゼロ世帯が全世帯の4割近くにも昇っている。個人所得は韓国にも抜かれ、世界第二位の経済大国なんて昔の話になってしまった。

 これは日本人の頑張りが足りないのではなく、投資をしないからである。今ならまだ投資をすれば少しは遅れが取り戻せるかもしれない。しかしながら改憲で財政健全化が憲法の条文に入ればジ・エンドである。だから自民党の憲法草案から財政健全化の条文が残っている限り改憲には反対しないといけない。

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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